イントロ

三角形の骨組みだけで、柱を一本も使わずに、体育館ほどの広い空間を屋根で覆うことができる。四角い骨組みでは決してできない芸当である。この違いを生むのが、今回解説するトラスという考え方である。少ない材料で、大きな空間を支える仕組みを見ていこう。
問題提起

太い梁を使い、たくさんの柱を立てれば、広い空間には屋根をかけられる。しかし梁は太くなるほど重く、材料も増えていく。柱を減らして広い空間を作ろうとするほど、必要な木材の量は跳ね上がってしまうのである。
ポイント
- 柱を増やせば広い空間を作れる
- 梁が太くなるほど材料が増える
- 木材の量が跳ね上がってしまう
核心の説明
この問題を解決する鍵は、三角形という形そのものにある。三角形は、各辺の長さを保ったまま形を変えることができない。ところが四角形は、辺の長さがそのままでも、力を受けると平行四辺形にゆがんでしまう。三角形の骨組みだけが、変形しない構造の基本単位なのである。
仕組み・理由
トラスの部材は、両端が軸で留められているだけなので、押される力か引っ張られる力しか受けない。曲げの力がかからないため、細く軽い部材でも十分な強度が出せる。中央に一本の柱を立てる真束のトラスと、中央を空けて2本の柱を立てる対束のトラスが、代表的な組み方である。
具体例

1872年に操業を始めた世界遺産の富岡製糸場では、繰糸を行う建物の桁行がおよそ140メートルもありながら、真束のトラスによって内部に柱が一本もない。北海道の琴似屯田兵村では、1874年という早い時期に、普通の住宅にも同じトラスの仕組みが取り入れられている。
ポイント
- 富岡製糸場は桁行約140m
- 真束トラスで柱が1本もない
- 琴似兵村では1874年に住宅へ導入
よくある誤解

材料を増やすほど頑丈になる、と思われがちだが、これは半分しか正しくない。日本古来の和小屋は、太い梁を単純に渡す構造で、材料の割に対応できる幅が限られている。トラスを使う洋小屋なら、より少ない材料で、より広い空間に対応できるのである。
ポイント
- 和小屋は太い梁を単純に渡す
- 対応できる幅には限りがある
- 洋小屋のトラスならより広く
使いどころ

ここからは異世界での実践編である。柱のない広い集会場や、大きな倉庫、市場の屋根を作りたい大工や領主。太い梁と大量の柱をかき集める前に、トラスという発想を知っているかどうかで、必要な木材の量が大きく変わる。
ポイント
- 集会場や倉庫を作る大工
- 市場の屋根を任される領主
- 太い梁を集める前に発想を知る
導入の条件
トラスを組むには、まっすぐで丈夫な木材、部材同士をしっかり固定できる継手や縄、そしてどの部材が押され、どの部材が引っ張られるかを見極める知識、この3つが要る。継手が緩ければ、三角形は簡単に形を崩してしまう。
その世界流の工夫

太い一本材が手に入らなくても、細い木材を縄でしっかり縛り、三角形を組み合わせるだけでトラスは作れる。合掌造りの結のように、縄で締め上げる技術があれば、鉄の金具がなくても十分に強い骨組みが作れるだろう。
ポイント
- 細い木材を縄で組み合わせる
- 結のような締め上げの技術
- 鉄の金具がなくても強くなる
効果の程度・次の一手
実際、真束のトラスひとつで、140メートルもの柱のない大空間を実現した例がある。同じ考え方は屋根だけでなく、川に渡す橋にも応用できる。トラスを覚えたら、次はトラス橋という応用にも挑戦してみよう。
まとめ

三角形は変形しない。この単純な原理が、少ない材料で大きな空間を覆うトラスという技術を支えている。もし異世界で広い屋根や橋を任されたら、太い梁を積み上げる前に、三角形の骨組みを思い出してほしい。
参考・出典
- トラス(Wikipedia)
- 旧富岡製糸場 繰糸所(文化庁 文化遺産オンライン)
- 琴似屯田兵屋(文化庁 文化遺産オンライン)