夜空は方位ばんで暦

もしあなたが異世界に転生して、夜の街道で道に迷ったら。方位磁針も地図もありません。でも空さえ晴れていれば、頭の上に大きな方位ばんと暦が広がっています。星です。星の位置を読めれば、東西南北も、いまの季節も、だいたいの時刻さえ分かります。今日は、星で方角と季節を知る方法のお話です。
なぜ星で方角がわかるのか

星が方角を教えてくれるのは、地球が一日にほぼ一回、自転しているからです。地上から見ると、星ぜんたいが北の空のある一点を軸にして、ゆっくり回って見えます。その軸のすぐそばに、たまたま明るい星が一つあります。それが北極星です。北極星はほとんど動かず、いつでも真北の方向にあります。
北極星の見つけ方

北極星は、とびぬけて明るいわけではないので、まわりの星から探します。ひしゃくの形にならんだ北斗七星。そのすくう先がわのはしにある二つの星を結び、その間かくを五倍ほどのばした先に、北極星があります。北斗七星が地平線ちかくで見えないときは、反対がわのカシオペヤ座、エムの形の星ならびからたどります。
ポイント
- ひしゃくの先の二星を結ぶ
- その間かくの約五倍先
- 見えなければカシオペヤ座から
北極星の高さは緯度になる
北極星には、もう一つ大事な使い方があります。地平線から北極星までの高さの角度をはかると、その数字が、そのまま今いる土地の緯度になります。北へ進むほど北極星は空高くのぼり、南へ下がるほど地平線に近づきます。つまり星の高さが、自分が南北にどれだけ動いたかを教えてくれるのです。
南の世界では南十字星

もし南のほうの世界へ転生すると、北極星は地平線の下にかくれて見えません。かわりに使うのが、南十字星です。十字の長いほうの棒を、下へ四倍半ほどのばした先が、天の南の軸になります。そこに目印の星はないので、地平線におろした点が真南です。よく似た、にせ十字とまちがえないよう気をつけます。
星は一晩で東から西へ
星は一晩のうちに、東の地平線から昇り、南の空を通って、西へしずんでいきます。動く速さはほぼ一定で、一時間におよそ十五度。うでを伸ばしたこぶし一つ半ぶんです。だから、ある星がどこまで動いたかを見れば、日がしずんでから何時間たったかが分かります。夜の見張りや夜歩きの、だいたいの時計になります。
ポイント
- 東から昇り西へしずむ
- 一時間で約十五度動く
- 動いた角度で経過時間がわかる
季節で夜空が入れかわる
季節によって、夜に見える星座が変わります。これは、地球が一年かけて太陽のまわりを回るので、夜がわを向く方向が少しずつずれていくからです。同じ星は、毎日およそ四分ずつ早く昇り、一か月で三十度、一年でちょうど一周ぶんずれます。だから星を見れば、こよみのだいたいの位置も分かります。
四季の目印になる星座
四季の目印になる星座を覚えておくと便利です。日がしずんだあとの東の空に、春はしし座、夏はさそり座、秋はペガススの四辺形、冬はオリオン座がのぼってきます。古代エジプトでは、シリウスが明け方に昇る日をナイル川のはんらんの合図とし、農作業のこよみにしていました。
実践編・どんな立場で役立つか

ここからは実践編です。星読みがいちばん効くのは、目印のない場所を夜に移動するときです。砂漠や草原をゆく隊商、街道を急ぐ使者、沖に出た船。曇りの日や森の中では星が見えないので、昼のうちに進む方向を決め、夜は星で微調整する、という組み合わせがうまくいきます。
実践編・始める条件と道具
始めるのに必要なものは多くありません。まず、晴れて開けた夜空。次に、おもな星座と北極星を見分けられること。それから、自分のいる土地のおおよその緯度。角度をはかる道具は、なければ手のひらで代用できます。逆に、曇りや雨の夜、深い森の中では使えないので、別の手段も用意しておきます。
実践編・手で測る工夫と精度
うでをいっぱいにのばすと、体の大きさに関わらず、手が空の角度のものさしになります。にぎりこぶしの幅がおよそ十度、指三本で五度、小指一本で一度ほど。これで星の高さや、星どうしの間かくがはかれます。方角のずれは数度、時刻は十五分ほど、季節は数日のくるいにおさめられます。
実践編・次の一手
もっと正確にしたいときの、次の一手です。ひもに結び目をつけた、カマルという道具で、星の高さを指の幅で記録します。さらに進むと、目盛りのついたアストロラーベや四分儀で角度をきっちり読む。こうして緯度を正確に出せるようになると、外洋を横切る、緯度こうほうという航海術につながっていきます。
まとめ

まとめます。天は北極星を軸にして回るので、北極星は真北の目印になり、その高さは緯度を教えてくれます。星は一時間に十五度動いて時計になり、見える星座は季節でめぐって暦になります。剣も魔法もなくても、晴れた夜空さえあれば、あなたは道にも季節にも迷いません。
参考・出典
- Polaris (North Star)(Encyclopaedia Britannica)
- Celestial navigation(Encyclopaedia Britannica)
- Crux (constellation)(Encyclopaedia Britannica)
- Sothic cycle(Encyclopaedia Britannica)