イントロ

もしあなたが、暦も時計もない異世界に転生したら。じつは、まっすぐな棒が一本あれば十分です。地面に立てた棒の影は、いまが正午か、どちらが北か、季節がどこまで進んだかを、だまって教えてくれます。今日のテーマは、最古にして最強の観測器、グノモンです。
グノモンとは

グノモンとは、地面に垂直に立てた一本の棒のことです。日時計のまんなかにある、あの影を落とす棒だと思ってください。特別な材料はいりません。まっすぐで丈夫な棒と、平らで水平な地面。この二つがあれば、もう観測を始められます。
影は一日でどう動くか

まず、一日の影の動きを見てみましょう。朝、太陽が東からのぼると、影は西へ長くのびます。時間がたつほど影は短くなり、太陽が真南に来たとき、影はいちばん短くなります。午後はまた東側へ、少しずつ長くのびていきます。
ポイント
- 朝の影は西へ長くのびる
- 正午に影はいちばん短い
- 午後は東へまた長くのびる
正午を知る

この、影がいちばん短くなった瞬間こそ、その土地の本当の正午、南中です。時計がなくても、影の長さを見はっていれば、正午が正確にわかります。そしてこのとき、北半球では影はまっすぐ北を指しています。
南北線を引く
正午を待たずに南北を出す方法もあります。午前中、影の先に印をつけ、棒を中心にその長さの円をかきます。午後、のびてきた影の先が、同じ円と交わる点に、もう一つ印を。二つの印を結んだ線の、まんなかと棒を結べば、それが正確な南北線です。
季節で影の長さが変わる
正午の影の長さは、季節によって変わります。太陽が低い冬至のころ、影はいちばん長くなります。太陽が高い夏至のころは、いちばん短い。春分と秋分は、ちょうどその中間です。棒の高さを百とすると、北緯四十五度あたりでは冬至はおよそ二百五十、夏至は四十ほどです。
ポイント
- 冬至は太陽が低く影が最長
- 夏至は太陽が高く影が最短
- 春分・秋分はその中間
影から緯度を知る
影の長さから、自分がいる場所の緯度も割り出せます。春分か秋分の日の正午、影が地面と作る角度をはかると、その角度がそのまま、あなたのいる土地の緯度になります。北へ行くほど太陽は低く、影は長く、緯度の数字は大きくなります。
影で地球をはかる

大昔、エラトステネスという学者は、この影だけで地球の大きさをはかりました。離れた二つの町で、同じ日の正午の影の角度をくらべたのです。その差は七度あまり、円周のおよそ五十分の一。町のあいだの距離を五十倍して、地球一周をほぼ言い当てました。
実践編・使いどころ

ここからは実践編です。村や小さな領地では、グノモン一本が暦と時計の代わりになります。正確な正午がわかれば、鐘を鳴らす時刻や市の開始をそろえられる。南北線がわかれば、家や畑をまっすぐ向けられる。季節がわかれば、種まきの時期を外しません。
ポイント
- 正午がわかり鐘や市の時刻をそろえる
- 南北線で家や畑の向きを決める
- 季節がわかり種まきを外さない
実践編・始める条件
始めるのに必要なものは多くありません。平らで水平な地面、一年たっても動かない丈夫な棒、一日じゅう日の当たる場所。あとは、毎日正午の影を記録し続ける根気です。曇りの日はとばして、翌日また続ければ大丈夫です。
実践編・その世界流の工夫
その世界での工夫は、棒をできるだけ高くすることです。棒が高いほど影は長くなり、わずかな差も読みとれます。まずは板に釘を立てて試し、うまくいけば石の柱に置きかえる。地面には、正午の影が落ちる線、子午線をきざんでおきます。
実践編・見込める効果

効果の程度を具体的にいうと、ふつうの棒でも一年観察すれば、冬至と夏至の日を、一日か二日の精度で当てられます。大きな石柱と目盛りがあれば、日単位でわかる。種まきや収穫の適期を、天気だのみではなく暦で決められるようになります。
ポイント
- ふつうの棒でも一、二日の精度
- 大きな石柱なら日単位でわかる
- 種まき・収穫を暦で決められる
実践編・次の一手
影が読めるようになったら、次の一手です。南北線があれば、そこに時刻の目盛りを刻んで日時計が作れます。緯度がわかれば海図の助けになる。さらに、離れた町と正午の時刻の差をくらべれば、東西の距離、つまり経度の測量にもつながります。
まとめ

まとめます。垂直に立てた棒の影は、いちばん短い瞬間が正午、その向きが真北、長さの変化が季節を教えます。道具は棒一本と平らな地面だけ。剣も魔法もなくても、影さえ読めれば、あなたは時刻と方角と暦を手にできます。
参考・出典
- gnomon(Encyclopaedia Britannica)
- Eratosthenes(Encyclopaedia Britannica)
- sundial(Encyclopaedia Britannica)
- solstice(Encyclopaedia Britannica)