イントロ

異世界の街で人口が増えてきた。井戸だけでは足りず、水を求めて遠くまで汲みに行く日々が続く。実は、水源を選ぶ段階でその苦労の大半は防げる。今回は、上水道を計画するときの水源選びを解説する。
限界

近くの川は洗濯や排水で汚れ、井戸は日照りが続くと涸れてしまう。水量が足りても、汚れた水を飲めば病気が広がる。近くて手軽な水を選ぶだけでは、都市の水は安定しないのである。
ポイント
- 近くの川は洗濯や排水で汚れる
- 井戸は日照りが続くと涸れる
- 汚れた水は病気を広げる
核心の説明
選ぶべき水源には二つの条件がある。まず、都市よりも標高が高いこと。そしてもう一つ、汚れの原因となる場所から離れていること。この二つを満たす水源さえ見つければ、水道計画の土台は完成したも同然である。
仕組み・理由
標高が高い水源を選べば、ポンプを使わずとも水は重力だけで低い街まで流れる。さらに汚染源から離れていれば、口に入る前に水が汚れる心配も減る。この二条件が、上水道の質と維持のしやすさを決めるのである。
具体例

この発想は歴史上何度も実践されてきた。ローマ帝国は山地の水源から水道橋で都市へ水を引き、江戸の玉川上水は多摩の川から遠く離れた高台の水源を選んで町へ通した。
ポイント
- ローマ帝国は山地の水源から水道橋で
- 江戸の玉川上水は多摩の高台水源から
- 文明を問わずくり返された発想
よくある誤解
注意したいのは、近い水源が必ずしも良いとは限らないという点である。すぐそばの低い井戸より、少し遠くても標高が高くきれいな水源の方が、結局は安定して長く使えることが多い。
使いどころ

ここからは異世界での実践編である。新しい街を興す領主、水道を整えたい町の代官、井戸に頼れなくなった開拓村の長。水源選びは、都市計画のごく初期に決めておくべき最重要事項の一つである。
ポイント
- 新しい街を興す領主
- 水道を整えたい町の代官
- 井戸に頼れない開拓村の長
導入の条件
必要なのは、周辺の地形を歩いて調べる時間と、簡単な水準器で高低差を測る技術、そして水源から街までの土地を通行・利用できる許可である。標高差がなければ、水路のためにポンプや水車の力を借りる工夫が要る。
その世界流の工夫

理想の水源が遠くにしかない場合は、途中に貯水池や沈殿槽を設けて水質を保ちながら中継する方法がある。乾季に涸れる水源しかないなら、井戸を予備として組み合わせておくのも現実的な工夫である。
ポイント
- 途中に貯水池・沈殿槽を設けて中継
- 乾季に涸れるなら井戸を予備に
- できる範囲から段階的に整備
効果の程度
効果を見てみよう。汚染源の近くの水を飲み続けた集落では水系感染症が繰り返し発生するが、標高が高くきれいな水源に切り替えるだけで、同じ規模の集落でも患者数は大きく減ることが分かっている。
次の一手

水源が決まったら、次は水路や樋を整備して安定して街まで届ける段階に進める。余裕が出れば、沈殿や濾過の設備を足して水質をさらに高め、配水網を広げて街全体へ行き渡らせることもできる。
ポイント
- 水路や樋を整備して安定供給
- 沈殿・濾過の設備で水質向上
- 配水網を広げ街全体へ
まとめ

水源選びは、上水道づくりの一番最初の、そして一番大事な一歩である。もし異世界で街づくりに関わることになったら、まずは高台の澄んだ水を探すことから始めてみてほしい。
参考・出典
- 水道の歴史(厚生労働省)
- Roman aqueduct(Encyclopaedia Britannica)
- 玉川上水の歴史(東京都水道歴史館)