つかみ

もし冷蔵庫も砂糖もない世界で、何年も腐らず、傷の手当てにも使える食べ物があったら、どうでしょう。その正体は蜂蜜です。蜂蜜は人類が最も古くから使ってきた甘味料のひとつで、保存食としても薬としても重宝されてきました。今回は、蜂蜜がなぜ腐らないのか、どうやって採るのか、そして異世界でどう役立つのかを解説します。
問題提起

昔の食べ物は、ほとんどが時間とともに傷みます。塩漬けや干し物、酢漬けなどで保存しましたが、甘くて長持ちする食べ物は貴重でした。砂糖は高価で手に入りにくく、甘味そのものが特別な存在でした。では、なぜ蜂蜜だけは長く保存できるのでしょうか。
ポイント
- 砂糖は高価で手に入りにくい
- 多くの食べ物は数日で傷む
- 蜂蜜は密閉すれば長持ちする
核心の説明
蜂蜜が腐らない理由は三つあります。一つ目は水分が少ないこと。二つ目は糖分がとても多いこと。三つ目は、蜂が加えた酵素が働いて、やや酸性の状態と抗菌作用を生むことです。細菌やカビは、水分が足りないと増えることができません。
仕組み
蜂は花の蜜を集めて巣に運びます。蜜は水分が七割から八割ほどあり、そのままでは発酵してしまいます。そこで蜂は蜜を口の中で何度も混ぜ、酵素を加えて糖を変えます。さらに羽ばたいて風を起こし、水分を飛ばします。水分が二割近くまで減ると、発酵は起きにくくなります。最後に巣の六角形の部屋に詰め、蜜蝋でふたをして保存します。
採取の技術

昔の養蜂では、巣箱や木の洞から蜂の巣を切り取り、蜜の部分を布や目の細かい網でこして集めるのが基本でした。蜂を落ち着かせるために煙を使います。採るのは、ふたがされた部屋の蜜です。ふたがない部屋の蜜はまだ熟していないことが多いので、残しておきます。
保存のコツ

採った蜂蜜は、乾いた密閉容器に入れ、高温多湿を避けて保存します。冷えると白く結晶化することがありますが、これは品質が落ちたわけではありません。湯せんで穏やかに温めれば、元の状態に戻ります。水で薄めた蜂蜜は発酵しやすくなるので、早めに使いましょう。
ポイント
- 乾いた密閉容器で保存する
- 白く固まるのは結晶化で劣化ではない
- 水で薄めたら早めに使う
よくある誤解と注意
ここで大事な注意があります。蜂蜜は一歳未満の乳児に与えてはいけません。蜂蜜にはボツリヌス菌の芽胞が混ざっていることがあり、乳児の腸内で増えて毒素を出すおそれがあるからです。芽胞は熱に強く、普通の加熱では死にません。大人や一歳以上の子どもには問題ありません。
傷の手当てへの歴史

蜂蜜は古くから傷の手当てにも使われてきました。抗菌作用があり、傷を湿った状態に保つことで治りを助けると考えられています。現代でも、一部の創傷の治療に医療用の蜂蜜材料が使われています。ただし、深い傷や大きなやけどは、必ず医師の手当てを受けてください。
実践編:使いどころ

ここからは異世界での実践編です。商人なら、蜂蜜は腐りにくい甘味料として、長い旅の携行食に向いています。干し肉やパンに混ぜれば、エネルギーを補えます。冒険者なら、小さな壺に入れて持ち歩き、軽い切り傷の手当てに使えます。保存場所を選ばないのも大きな強みです。
実践編:導入の条件
蜂蜜を自分たちで作るには、条件があります。まず、花が多く咲く場所が近くにあること。次に、蜂の群れを住まわせる巣箱か木の洞を用意できること。そして、蜂の扱いに慣れた人手です。逆に、花が少ない荒れ地では、無理に始めても採れる量は期待できません。
実践編:その世界流の工夫

その世界流の工夫としては、まず小さな巣箱から一つ試し、蜂の様子を観察することです。いきなり大量に始めるより、失敗の少ない進め方になります。採れた蜂蜜は、水で薄めて発酵させれば蜂蜜酒になり、交易の品になります。同時に得られる蜜蝋は、蝋燭や軟膏の材料に使えます。
ポイント
- 小さな巣箱から一つ試して観察する
- 蜂蜜を発酵させ蜂蜜酒にする
- 蜜蝋は蝋燭や軟膏の材料にする
実践編:効果の程度

効果の見込みは、誇張せず考えましょう。養蜂は、巣箱を置いてから実際に採蜜できるまで、数か月から一年ほどかかることがあります。採れる量は花の多さと天候に左右されるので、毎年安定して採れるとは限りません。最初の一年は、自家用の甘味料と傷の手当ての分を確保するのが現実的です。
実践編:次の一手
蜂蜜が作れるようになったら、次に挑戦できることがあります。蜜蝋で蝋燭や軟膏を作る。蜂蜜酒を仕込んで交易品にする。花の種類によって味の違う蜂蜜を作り分ける。ここまで来ると、蜂蜜は村の産業になります。
まとめ

蜂蜜は、水分が少なく糖分が多いため、ほとんど腐らない食べ物です。蜂が作る仕組みを知れば、採り方や保存の工夫も見えてきます。ただし、一歳未満の乳児には与えないことだけは忘れないでください。異世界で蜂蜜を見つけたら、まずは花と蜂の巣を探してみてください。
参考・出典
- 乳児ボツリヌス症の予防に関する事務連絡(平成29年4月7日)(厚生労働省)
- Biochemical Reactions and Their Biological Contributions in Honey(PubMed Central(米国国立医学図書館))
- Exploring the antibacterial properties of honey and its potential(PubMed Central(米国国立医学図書館))