同じ管を流れる汚水と雨水

もしもあなたが異世界の街づくりを任されたなら、まず確かめてほしいことがあります。トイレなどの汚れた水と、空から降る雨水が、同じ一本の管を流れていないかということです。この違いひとつで、街が疫病に苦しむかどうかが大きく変わってきます。
ポイント
- 排水の分け方で街の衛生が変わる
- 異世界の街づくりでも重要な知恵
分けないと何が起きる?

汚水と雨水をひとつの管にまとめてしまうと、大雨のときに管の中身があふれ出してしまいます。あふれた水には汚水が混ざったまま川や井戸に流れ込み、コレラや赤痢のような水系感染症が一気に広がる原因になります。
ポイント
- 大雨で管があふれる
- 汚水混じりの水が川や井戸へ
合流式下水道のしくみ
汚水と雨水をまとめて一本の管で流す方式を、合流式といいます。管を一種類だけ作ればよいので工事の手間もコストも抑えられ、実際に多くの都市が最初はこの方式で下水道を整備してきました。晴れた日はこれで十分に機能します。
分流式下水道のしくみ
一方、汚水用と雨水用の管を最初から二本に分けておく方式が分流式です。汚水は必ず処理場へ、雨水はそのまま川へと、それぞれ別のルートを通ります。管を二本作る分だけ費用はかかりますが、大雨でも汚水があふれる心配がありません。
大雨で汚水があふれる理由
合流式の弱点は大雨のときに出ます。管に流れ込む雨水の量が急に増えると、管の容量を超えてしまい、汚水混じりの水がそのまま川へ流れ出てしまうのです。これを越流と呼び、多くの国で今も対策が続く古くて新しい問題です。
分流式にたどり着くまでの歴史
古代ローマにはクロアカ・マキシマという巨大な合流式の下水道がありました。時代が下って十九世紀のロンドンでは、汚水があふれて川が悪臭を放つ大悪臭事件が起き、技師バザルジェットが大規模な下水道網を建設しました。分流式が広まったのはその後のことです。
分流式は万能ではない

分流式さえ作れば安心というわけではありません。管を二本通す分だけ土地と費用が余計にかかりますし、すでに建物が立ち並ぶ街では道路を掘り返す工事そのものが大仕事になります。地形の傾斜が使えるかどうかも、成功を左右する条件です。
ポイント
- 管2本ぶんの土地と費用が必要
- 既存の街ほど工事が難しい
転生先で分流式を検討する条件
実際に異世界の街で分流式を採り入れるなら、まず地形の傾斜があるかを確かめましょう。水は高いところから低いところへ自然に流れるので、傾斜があれば動力なしで排水できます。次に、粘土を焼いた土管や木の樋など、管を作る材料と職人の手を集められるかも重要な条件です。
あるもので代用する工夫

鉄やコンクリートの管が無くても、素焼きの土管や中をくり抜いた木の樋で代用できます。まずは人通りの多い広場や市場まわりだけ分流式にして、残りは従来どおりにするなど、街全体を一度にではなく少しずつ手を加えていくのが現実的な進め方です。
効果はどれくらい見込めるか
分流式にすると、大雨のたびに汚水混じりの水が川へあふれる回数を大きく減らせます。合流式のままだと大雨のたびに越流が起きやすいのに対し、汚水管を分けてしまえばその心配自体がなくなる、というのが分流式の一番の強みです。数字はあくまで目安として捉えてください。
次に進める一手
汚水と雨水を分けられたら、次は集めた汚水をどう浄化するかが課題になります。沈殿池や砂でろ過するだけでも、川へ戻す水はぐっときれいになります。分流式は、この先の浄化技術へつながる最初の一歩なのです。
まとめ

汚水と雨水を分けるかどうかは、地味に見えて街の命運を左右する大きな選択です。異世界で街づくりに関わることがあれば、まず地形の傾斜と使える材料を確かめて、できるところから分流式を取り入れてみてください。
参考・出典
- 下水道の仕組み(合流式・分流式)(国土交通省)
- Combined Sewer Overflows (CSOs)(US EPA)
- Sewage system(Encyclopaedia Britannica)
- Water, sanitation and hygiene (WASH)(WHO)