イントロ

17世紀、江戸とロンドンは、それぞれ街の大半を焼き尽くす大火に見舞われた。その経験から生まれた工夫が、今も地名や街並みに残っている。火を止めるために、あえて何も建てない空間を作る。今回は、都市大火の歴史と防火帯という考え方を解説する。
問題提起

木造の家が隙間なく建ち並ぶ街では、一軒から出た火が、あっという間に隣へ、そのまた隣へと燃え移ってしまう。屋根と屋根が近ければ近いほど、火の粉は簡単に飛び火し、街全体が一つの巨大な燃料の塊になってしまうのである。
ポイント
- 隙間なく建ち並ぶ木造家屋
- 一軒の火がすぐ隣に燃え移る
- 街全体が燃料の塊になる
核心の説明
この問題への答えが、火除け地や広小路と呼ばれる空間である。建物と建物の間に、あえて何も建てない土地や、通常より広い道を配置しておくと、火の粉が届く距離が足りず、そこで延焼が止まる。燃料を絶やすという、単純だけれど確実な方法である。
仕組み・理由

火が燃え広がるには、次に燃え移る燃料が近くにある必要がある。土地や道幅を十分に広げておけば、火の粉や熱がその距離を飛び越えられず、向こう側の建物まで火が届かない。加えて瓦や煉瓦のような燃えにくい建材を使えば、万一火の粉が届いても燃え広がりにくくなる。
ポイント
- 火の粉が届く距離には限りがある
- 土地や道幅で燃料を断ち切る
- 不燃の建材が延焼をさらに防ぐ
具体例
1657年の明暦の大火では、江戸城の天守を含む江戸の大半が焼失し、死者は3万人から10万人にのぼったとされる。幕府は天守の再建より復興を優先し、火除け地と広小路を各所に設けた。1666年のロンドン大火でも、家屋のおよそ85%が焼失し、その後の再建法で建物は煉瓦造とされ、道幅も定められている。
よくある誤解

大火はただの運の悪い出来事、と思われがちだが、これは正確ではない。街の建材や道幅、建物の密集度は、火事がどこまで燃え広がるかを大きく左右する。実際、江戸とロンドンは大火の教訓から街の形そのものを変え、その後の被害を大きく減らすことに成功した。
ポイント
- 建材や道幅が延焼を左右する
- 街の形そのものを変えられる
- 江戸とロンドンは被害を減らした
使いどころ

ここからは異世界での実践編である。大火のあとに街を建て直す領主や、これから新しい街を計画する都市の設計者。同じ悲劇を二度と繰り返さないために、街づくりの段階でできることがある。
ポイント
- 大火のあとに街を建て直す領主
- 新しい街を計画する設計者
- 同じ悲劇を繰り返さないために
導入の条件
燃え広がらない街を作るには、あえて空けておく火除け地、火を跳び越えさせない広い道である広小路、そして瓦や煉瓦、漆喰壁といった不燃の建材、この3つが要る。どれか一つが欠けても、火はどこかから燃え移る隙を見つけてしまう。
その世界流の工夫

火除け地は、普段は市場や広場として使えば、土地を無駄にせずに済む。緑の多い庭や並木を防火帯として植えるのも一つの手である。屋根を萱葺きから瓦や石に変えるだけでも、飛び火に対する強さは大きく変わるだろう。
ポイント
- 火除け地は市場や広場として活用
- 緑の並木を防火帯にする
- 屋根を瓦や石に変える
効果の程度・次の一手
実際、江戸もロンドンも、火除け地や広小路、不燃建材を取り入れたあとは、同じ規模の大火に見舞われることはなくなった。空間を空けて被害を止めるという発想は、火事だけでなく、洪水や疫病の広がりを抑える街づくりにも応用できる。
まとめ

隙間なく建てるより、あえて空白を残す。この一見遠回りに見える工夫が、街を大火から守ってきた。もし異世界で街を建て直す立場になったら、火除け地と広小路、そして不燃の建材を思い出してほしい。
参考・出典
- 1657 明暦江戸大火 報告書(内閣府 防災情報のページ)
- 明暦の大火(Wikipedia)
- ロンドン大火(Wikipedia)