イントロ

異世界の村や砦を守りたい。しかし石を積む石工もいなければ、時間もお金もない。そんなときに使える、驚くほど単純な防御術がある。地面を掘り、掘った土を盛るだけ。今回は堀と土塁の作り方を解説する。
限界

木の柵を立てただけの囲いは、よじ登られればすぐ突破される。かといって石の城壁を一から積むには、石工の技術と莫大な資材、そして何年もの歳月が要る。多くの村にはどちらも用意できない。
ポイント
- 木の柵はよじ登られれば突破される
- 石壁には技術と莫大な資材が要る
- 何年もの歳月をかけられない
核心の説明
発想は単純である。地面に溝を掘り、掘り出した土をそのまま溝のわきに積み上げる。これだけで、溝の深さと盛った土の高さが足し合わされ、実際の掘削量以上の高低差を作り出せる。石材も余分な材料も要らない。
仕組み・理由
攻める側から見ると、まず堀に一度下り、そこから土塁をよじ登らなければ壁の上に届かない。上る途中は無防備で、守る側は上から狙い放題である。単なる高さ以上に、この二段構えが攻撃側の勢いを削ぐ。
具体例

この工夫は世界中で使われてきた。中世ヨーロッパの土塁城、古代日本の環濠集落、行軍中のローマ軍が一夜で築いた野営地の堀。文明や時代が違っても、掘って盛るという発想はくり返し発見されてきたのである。
ポイント
- 中世ヨーロッパの土塁城
- 古代日本の環濠集落
- ローマ軍の一夜城の堀
よくある誤解
注意したいのは、土を積んだだけの斜面は際限なく急にはできないという点である。土には安定して崩れない角度の限界があり、それを超えると雨で簡単に崩落する。急ぎすぎず、緩やかな法面を保つことが重要になる。
使いどころ

ここからは異世界での実践編である。盗賊や魔物の襲撃に備えたい辺境の村、開拓したばかりの入植地、行軍中に一夜の陣を守りたい傭兵団。石工も予算もない立場ほど、この堀と土塁は頼れる味方になる。
ポイント
- 襲撃に備えたい辺境の村
- 開拓したての入植地
- 行軍中の一夜の陣にも
導入の条件
必要なのは、掘りやすい土地と、鍬や鋤を持った人手、そして数日から数週間という時間である。岩盤がむき出しの土地では掘削が難しく、逆に水はけの悪い低地では堀に水がたまり過ぎて作業が滞る。
その世界流の工夫

人手が少ない村なら、集落の一部だけ先に囲い、後から範囲を広げていく段階施工が現実的である。切り出した木を土塁の上に並べれば柵代わりになり、川に近ければ堀に水を引き込んで水堀にする工夫もできる。
ポイント
- 集落の一部から先に囲う段階施工
- 切り出した木を土塁上の柵に
- 川が近ければ水を引き水堀に
効果の程度
効果を数字で見てみよう。深さ2メートルの堀を掘れば、盛った土でおよそ2メートルの土塁ができ、合わせて4メートル近い高低差になる。石を積むよりずっと短い日数で、これだけの防御力を得られるのである。
次の一手

堀と土塁ができたら、次は土塁の上に柵や櫓を足して防御力をさらに高められる。余裕が出てくれば、崩れやすい面だけ石や木材で補強する。段階を踏んで少しずつ本格的な城へ育てていけるのが、この工法の強みである。
ポイント
- 土塁の上に柵や櫓を追加
- 崩れやすい面を石や木材で補強
- 段階を踏んで拡張できる
まとめ

掘って、盛るだけ。特別な技術も大金も要らないこの工夫が、村や砦を一段強くしてくれる。もし異世界で身を守る場所が必要になったら、まずは鍬を手に、堀を掘ることから始めてみてほしい。
参考・出典
- 国指定文化財等データベース:城跡(堀・土塁の構造に関する解説)(文化庁)
- Motte-and-bailey castle(Encyclopaedia Britannica)
- 斜面の安定と土工の基本(法面勾配の考え方)(国土交通省)