イントロ

大きな橋が完成すると、誰もがゴールにたどり着いたような気持ちになる。けれど、本当に大変なのはそこからである。作った瞬間から、橋も道も少しずつ傷み始め、直し続けるための費用がずっとかかり続ける。今回は、インフラの維持費という問題を解説する。
問題提起
日本の橋やトンネルの多くは、高度経済成長期にまとめて作られた。そのため、老朽化のタイミングもほぼ一斉にやってくる。建設から50年を超える道路橋の割合は、2020年に約3割だったが、2040年には約7割5分にまで達する見込みである。
核心の説明

維持のやり方には、大きく2つの考え方がある。壊れてから直す事後保全と、壊れる前に定期点検で小さな傷を早めに直す予防保全である。同じ橋やトンネルでも、どちらのやり方を選ぶかによって、かかる費用も壊れる危険性も大きく変わってくる。
ポイント
- 壊れてから直す事後保全
- 壊れる前に直す予防保全
- 選び方で費用も危険性も変わる
仕組み・理由
国土交通省の試算では、全国のインフラを30年間、事後保全だけで維持すると費用は約250兆円から280兆円かかる。一方、予防保全に切り替えれば約180兆円から190兆円で済み、差はおよそ90兆円、割合にして約3割の縮減になる。
具体例

2012年、中央自動車道の笹子トンネルで、天井板が約138メートルにわたって崩落し、9人が犠牲になった。開通から37年間、劣化を見抜けるはずの打音検査が一度も行われていなかったことが、事故の後になって明らかになっている。
ポイント
- 2012年 天井板が138m崩落
- 9人が犠牲になった
- 37年間 打音検査が未実施
よくある誤解

作った瞬間がゴールだと思ってしまうのが、よくある誤解である。小さなひび割れのうちなら安く直せるが、放置すればするほど傷は深くなり、最終的にはかけ替えに近い大工事と、何倍もの費用が必要になってしまう。
ポイント
- 小さなひびなら安く直せる
- 放置するほど傷は深くなる
- 最終的には大工事で高くつく
使いどころ

ここからは異世界での実践編である。村や街の道、橋、水路を任される領主や村長、複数の集落を束ねる商人ギルド。これから何十年も使われ続ける設備を預かる立場になったなら、維持費という考え方が欠かせない。
ポイント
- 道・橋・水路を任される領主
- 村長や商人ギルドも同じ立場
- 何十年も使われ続ける設備
導入の条件
維持の仕組みを作るには、まず修繕にあてる財源、定期的に見回る点検の担当者、そしてどこをいつ直したかを記録する台帳、この3つが要る。どれか一つでも欠けていると、傷みに気づけないまま放置されてしまう。
その世界流の工夫

通行料や商人ギルドの会費の一部を、橋や道の修繕基金として積み立てておく工夫が有効である。魔物討伐で鍛えた冒険者に定期巡回を頼んだり、傷んだ箇所を石板に記録しておけば、少ない人手でも維持の仕組みは回り始める。
ポイント
- 通行料や会費を修繕基金に
- 冒険者に定期巡回を依頼
- 傷んだ箇所は石板に記録
効果の程度・次の一手
予防保全に切り替えれば、30年間の費用を約3割減らせるという試算がある。小さな村なら、浮いた分で新しい井戸を掘ったり、隣の集落まで道を延ばしたりする余力が生まれるだろう。維持の仕組みが整ってこそ、次の拡張に進めるのである。
まとめ

インフラは、作る金より維持する金の方が長く、そして重くのしかかる。壊れる前に小さく直す予防保全の考え方と、財源・点検・記録という体制。もし異世界で道や橋を任されたなら、まずこの仕組みづくりから始めてほしい。
参考・出典
- インフラ長寿命化計画(行動計画)令和3年度〜令和7年度(国土交通省)
- 社会資本の老朽化の現状と将来(国土交通省)
- 中央自動車道笹子トンネル天井板落下事故関連情報(国土交通省)