同じ馬なのに違う荷の量

同じ一頭の馬なのに、背中に荷物を乗せて運ぶときと、荷車を引かせて運ぶときとでは、運べる量がまるで違います。馬を替えたわけでも、鍛え直したわけでもないのに、です。いったいどれくらいの差があるのか、そして何がその差を生んでいるのか。今日はその仕組みを見ていきましょう。
力は同じなのに差が出る

一頭の馬の力そのものは、背負わせても、車を引かせても、そう大きくは変わりません。筋肉の量が急に増えるわけではないのです。それなのに、運べる荷物の量には大きな開きが生まれます。この差は、いったいどこから来るのでしょうか。
数字で見る積載量の差
実際の数字で見てみましょう。馬の背中に直接荷物を乗せる駄馬の場合、運べる量はおよそ100キログラムほどです。ところが同じ馬に荷車を引かせると、その量はおよそ1トン、実に10倍近くにまで増えるのです。数字にすると、その差の大きさがよくわかります。
支え方の違いが生む差

この差を生むのが、荷物の支え方の違いです。背中に乗せる荷物は、馬自身の脚と背骨だけで重さを支え続けなければなりません。長く歩けば歩くほど、馬の体には大きな負担がかかります。一方、車輪の付いた荷車なら、荷物の重さは車輪を通して地面がほとんど支えてくれるのです。
車輪が摩擦を減らす

さらに、車輪は地面との摩擦を大きく減らしてくれます。馬は荷物を持ち上げ続ける必要がなく、ただ転がる荷車を前に押し進めるだけで済むため、同じ力でずっと多くの荷物を動かせるようになるのです。まさに車輪の発明がもたらした恩恵です。
整った道があってこそ

ただし、この仕組みには条件があります。荷車が力を発揮するには、車輪がまっすぐ転がれる、ある程度平らで固い道が欠かせません。でこぼこの地面では、車輪はかえって邪魔になってしまいます。実際、古代ローマなどが石畳の街道を整備した地域では、荷車による大量輸送が大きく発展しました。
道の有無が輸送力を左右
つまり、道が悪ければ荷車の輪はぬかるみや石にとられ、立ち往生してしまい、かえって駄馬より運びにくくなることさえあります。整った道があってこそ、荷車は本来の力を発揮できるのです。道の有無が、輸送力を大きく左右します。
よくある誤解と注意点
ここでよくある誤解に注意してください。『荷車さえあれば運搬量は増える』というのは早合点です。道が伴わなければ、宝の持ち腐れになってしまいます。また『駄馬は非効率だから不要だ』というのも誤解で、道の無い山道などでは、今でも駄馬にしかできない仕事があります。
異世界での使いどころ

さて、ここからは異世界での実践編です。あなたが商人や領主として輸送力を高めたいなら、まず考えるべきは荷車そのものより、荷車が走れる道を整えることです。道さえあれば、馬を増やさなくても、同じ馬の力を何倍にも引き出せます。
導入の条件・前提
荷車輸送を始めるには、車輪がまっすぐ転がれる程度に平らで固い道と、荷車そのものを作る技術、そして荷車を引ける馬や牛が要ります。橋や坂道への対応も欠かせません。特に道の整備は一度きりでは終わらず、ぬかるみや轍の補修を続ける必要があります。
その世界流の工夫

道の整備が追いつかない区間では、無理に荷車を通そうとせず、駄馬で運ぶ選択肢も残しておきましょう。整った街道の区間は荷車、山道や未整備の区間は駄馬と、荷物を積み替えながら区間ごとに使い分けるだけでも、輸送全体の効率はぐっと上がります。
見込める効果の程度
道を整えて荷車輸送に切り替えれば、同じ数の馬と人手で、はるかに多くの荷物を一度に運べるようになり、往復の回数そのものも減らせます。逆に道の整備を後回しにしたまま荷車ばかりそろえても、実際に使える場面は限られてしまいます。
次の一手
道と荷車の組み合わせに慣れてきたら、次は川に橋を架けたり、轍がえぐれにくい石畳に近づけたりと、道そのものの質を上げていきましょう。悪天候の日でも荷車が滞りなく走れるようになります。輸送力はそのぶんさらに安定し、遠くの町との行き来もしやすくなります。
まとめ

同じ一頭の馬でも、背負わせるか、道の上で荷車を引かせるかで、運べる量は大きく変わります。輸送力を左右する本当の鍵は、馬そのものより、その馬が走る道にある。異世界で物を運ぶときは、この視点を、ぜひ覚えておいてください。
参考・出典
- Road(Encyclopaedia Britannica)
- Wheel(Encyclopaedia Britannica)
- History of transportation(Encyclopaedia Britannica)