イントロ

もしあなたが異世界に転生して、みごとな豊作を手にしたとします。ですが、油断は禁物です。その収穫した種をうまく保存できなければ、来年、畑にまく種がなくなってしまいます。種は、いわば来年の命綱。今回は、大切な種を長く生かしておく保存のコツと、発芽の力を見きわめる方法を解説していきます。
種は生きて眠っている

まず知ってほしいのは、種は生きている、ということです。かたく乾いて動かないように見えても、その内側では小さな命がじっと休眠(きゅうみん)、つまり眠りについています。そして眠っているあいだも、たくわえた力をほんの少しずつ使いながら、ゆっくりと年をとっていく。だから種は、置いておくほど、だんだん芽を出す力を失っていくのです。
ポイント
- 乾いて見えても中で命が眠る
- 眠る間も少しずつ力を使う
- 置くほど芽を出す力が弱る
種の寿命を縮める敵

種の寿命をちぢめる敵はいくつもあります。いちばんの大敵は湿り気、つまり水分です。しめった種は、中の命の活動が高まり、かえって早く弱ってしまう。次に、高い温度。暑さも種の老化を早めます。さらに、虫やカビ、ネズミは種そのものを食いあらす。この、湿気と熱と食害から、いかに種を守るかが勝負になります。
ポイント
- 最大の敵は湿気(水分)
- 高い温度も老化を早める
- 虫・カビ・ネズミが食いあらす
保存の三原則
そこで覚えておきたいのが、保存の三原則です。一つ、乾燥。種をしっかり乾かすこと。二つ、低温。すずしい場所に置くこと。三つ、密封(みっぷう)。空気や湿り気をしゃ断すること。この乾燥・低温・密封の三つをそろえるほど、種はおどろくほど長く生きのびてくれるのです。
ポイント
- 乾燥:しっかり乾かす
- 低温:すずしい場所に置く
- 密封:空気と湿気をしゃ断
なぜ乾燥と低温が効くのか
では、なぜ乾燥と低温が効くのでしょう。種の中の命も、水分と温度が高いほど活発に活動し、その分だけ早く消耗します。逆に、乾いて冷えていれば、活動はぐっとおさえられ、老化がゆるやかになる。経験的に、水分や温度を下げるほど寿命は倍々にのびていくとも言われます。じめじめした暖かさが、種にとっていちばんの敵なのです。
ポイント
- 水分・温度が高いと早く消耗
- 乾いて冷えると老化がゆるやか
- じめじめした暖かさが最大の敵
種類で寿命が違う
ただし、もともとの寿命は種類によって大きくちがいます。ネギやタマネギ、ニンジンの種は短命で、一年から二年ほどしかもちません。エンドウや麦などは中くらい。いっぽう、トマトやキュウリ、アブラナの仲間は長命で、じょうずに保存すれば四年から六年生きることもあります。だから、種ごとに扱いを変えるのが賢明です。
ポイント
- ネギ・ニンジンは一〜二年と短命
- エンドウ・麦は中くらい
- トマト・ウリ類は四〜六年と長命
発芽率という指標

次に大事なのが、発芽率(はつがりつ)という考え方です。発芽率とは、まいた種のうちどれだけが芽を出すかの割合のことです。とれたての種はほとんどが芽を出しますが、年月がたつと、この割合はだんだん下がっていく。まく前に、この種はあとどれくらい元気なのか。それを数字でつかんでおくことが、まき直しの失敗を防いでくれます。
ポイント
- 発芽率は芽を出す種の割合
- 古い種ほど割合が下がる
- まく前に元気さを数字で知る
発芽率の調べ方
発芽率は、とてもかんたんに調べられます。しめらせた布や綿の上に、種をたとえば十粒ならべて、あたたかい場所に置いておく。数日後、芽を出した数を数えます。十粒のうち七粒が芽を出せば、発芽率は七割。もし、この割合が低ければ、その分、種を多めにまいておぎなえばよい、というわけです。
ポイント
- 湿らせた布に十粒ならべる
- 数日後に芽の数を数える
- 七粒なら発芽率は七割
実践①よく乾かす

ここからは異世界での実践編です。まず、なにより大切なのが、よく乾かすこと。収穫した種は、風通しのよい日かげでしっかり陰干しします。かむとパリッと割れるくらいが、乾き具合の目安です。さらに、乾いた灰や炭、いった籾殻などをいっしょに入れておくと、まわりの湿り気を吸い取ってくれます。
ポイント
- 風通しのよい日かげで陰干し
- かむと割れるくらいが目安
- 灰・炭・籾殻が湿気を吸う
実践②冷暗所に密封

よく乾いたら、つぼやかめ、ふたのできるびんなどに入れて、しっかり密封します。空気と湿り気を入れないのがこつです。置き場所は、地下や家の北側など、一年を通してすずしく暗いところをえらぶ。虫よけにとうがらしをしのばせるのも、よい手です。容器には、いつのなんの種かを書きそえておきましょう。
ポイント
- 壺や瓶に入れしっかり密封
- 地下や北側の涼しく暗い所へ
- 唐辛子で虫よけ・年と種名を記す
実践③発芽率でまく量を決める

春がきたら、まく前に、さきほどのためし発芽をしてみましょう。芽のそろいがよければ、そのままの量でまく。もしまばらなら、いつもより種を厚めにまいておぎないます。何年も前の古い種でも、こうして力をたしかめれば、むだにせず使いきれる。まく量をかしこく決めることで、貴重な種を一粒も生かせるのです。
ポイント
- まく前に試し発芽で確かめる
- まばらなら厚めにまいて補う
- 古い種もむだにせず使いきる
実践④種を絶やさない

最後に、いちばん大切な心がまえです。どんなに飢えても、来年まく種籾(たねもみ)だけは食べてはいけない。これは、多くの土地に伝わる、生きのびるための鉄則です。種さえ残れば、村はまた立ち直れます。毎年、新しい種に少しずつ入れかえ、できれば何か所かに分けて保管する。そうすれば、万一のときも種を絶やさずにすむのです。
ポイント
- 飢えても種もみは食べない
- 毎年少しずつ新しい種に更新
- 何か所かに分けて保管する
まとめ

種の保存のかなめは、乾燥・低温・密封の三原則。そして、発芽率を測ってまく量を見きわめること。目に見えない種の命を守る知識は、この一年の豊作を、来年へ、そしてその先へとつないでくれます。もし異世界に転生したら、ぜひこの、種を絶やさない知恵を思い出してみてください。