イントロ
もしあなたが異世界に転生して、街づくりを任されたら。千年たっても崩れない水道橋や、大きな屋根の建物を作れたら、どうでしょう。それを可能にするのが、人工の石とも呼べる材料、コンクリートです。今回は、砂や石ころを一つの岩に変え、自由な形の建物を生み出す、その仕組みと作り方を、まるごと解説していきます。
石を積むだけの限界
まず、前近代の建物の多くは、石やレンガを積み上げて作られていました。ですが、ただ積んだだけの壁は、地震や、横からの力に弱く、大きくすると、もろくなります。すきまをうめるモルタルも、質が悪ければ、すぐにぼろぼろ。もっと丈夫で、もっと大きく、自由な形の建物。それを求めるなかで生まれたのが、コンクリートという発想でした。
要点(スライド):
- 積んだ壁は横からの力に弱い
- すきまのモルタルがもろい
- もっと丈夫で自由な形が欲しい
コンクリート=人工の石
コンクリートとは、いってみれば、人の手で作る岩です。砂や、砂利といった、かたい粒。これが、骨組みになります。そこへ、粒どうしをがっちり接着する、のりの役目の材料をまぜる。こののりが固まると、ばらばらだった砂利が、一つの大きな石のかたまりに、生まれ変わる。これが、コンクリートの、いちばん基本の考え方です。
要点(スライド):
- 砂や砂利が骨組みになる
- のり役の材料でまぜて接着
- 固まると一つの岩になる
のりの正体=石灰
では、そののりは、何から作るのか。かぎをにぎるのが、石灰です。石灰岩を、高い温度で焼くと、生石灰という、白い粉になる。これに水をくわえると、熱を出しながら反応し、やがて、ゆっくりと固まっていきます。この、焼いて、水と反応させて、固める、という流れが、あらゆるセメントの、おおもとになっているのです。
要点(スライド):
- 石灰岩を焼いて生石灰に
- 水を加えると反応して固まる
- あらゆるセメントのおおもと
ただの石灰の弱点
ところが、ふつうの石灰のモルタルには、大きな弱点があります。それは、水に、とても弱いこと。空気中では固まりますが、水の中や、じめじめした場所では、なかなか固まらず、もろいまま。ですから、水道橋や、港、水回りの建物には、そのままでは使えません。この弱点をこえた者だけが、水を制する国を、作れるのです。
要点(スライド):
- 空気中でしか固まりにくい
- 水中や湿地ではもろいまま
- 港や水道橋に使えない
火山灰という秘密
この弱点を、ひっくり返したのが、古代ローマ人でした。彼らは、火山の近くでとれる、ある灰のような土を、石灰にまぜたのです。すると、おどろくことに、水の中でも、しっかり固まる、強いコンクリートに変わった。この火山灰こそが、ローマの建物を、二千年ものあいだ、もたせつづけた、魔法の粉の正体でした。
要点(スライド):
- 石灰に火山灰をまぜる
- 水の中でもしっかり固まる
- ローマ建築を二千年もたせた
海水で強くなる
さらに、おどろくことがあります。この海のコンクリートは、時間がたつほど、むしろ強くなっていったのです。海水がしみこむと、内部で、新しい結晶が、ゆっくりと育ち、ひび割れを、ふさいでいく。いわば、みずから傷を治す石。現代のものが数十年で傷むなか、ローマのそれが今も残るのは、この自己修復の力なのです。
要点(スライド):
- 海水がしみて結晶が育つ
- ひび割れをみずから埋める
- 時間がたつほど強くなる
自由な形を生む
コンクリートの、もう一つの強みは、形の自由さです。かたまる前は、どろどろの状態。だから、木で作った型のなかに流しこめば、どんな形にでも、固められます。この性質と、アーチや、まるい天井を組み合わせることで、ローマ人は、柱のない広い空間や、巨大なドームを実現しました。石を積むだけでは、決してできない建築です。
現代との違い
時代がくだると、コンクリートには、鉄の棒を組みこむ工夫が、加わりました。鉄筋コンクリートです。引っぱりに弱いコンクリートを、鉄が内側から支え、より大きな橋や、高いビルを、可能にしました。ただし、その鉄が、いちどさびると、内側からふくらんで、こわしてしまう。強さと引きかえに、寿命の弱点を、かかえたともいえます。
要点(スライド):
- 鉄筋が引っぱりを支える
- 大きな橋や高いビルが可能に
- 鉄がさびると内から壊れる
作り方のコツ
もしあなたが異世界で作るなら、こつがあります。まず、石灰を、しっかり焼くこと。そして、骨材の砂利と砂は、大きいものと小さいものをまぜて、すきまを減らすこと。水は、入れすぎないこと。固めたあとは、急いで乾かさず、しめった状態のまま、ゆっくり時間をかけて固める。この、養生という手間が、強さを、大きく左右します。
要点(スライド):
- 石灰はしっかり焼く
- 砂利は大小まぜてすきまを減らす
- 乾かさずゆっくり養生する
異世界での使い道
使い道は、国のかたちを変えるほどです。遠くの水源から、都市へ水を運ぶ、長い水道橋。船をつける、じょうぶな港。城壁や、大きな倉庫、橋に、下水道。どれも、石を積むだけの時代には、ばくだいな手間が、かかったものばかり。コンクリートを手にした国は、より速く、より大きく、都市を築いていける、というわけです。
要点(スライド):
- 水道橋で都市に水を運ぶ
- 港や城壁や橋や下水に
- 速く大きく都市を築ける
まとめ
砂と、石ころと、焼いた石灰。ありふれた材料が、正しい配合で、千年もつ、人工の岩に変わります。火山灰や、ゆっくり固める手間といった、いくつかのこつを、知っているかどうかで、その耐久は、まったく変わってくる。もしあなたが異世界に転生したら、思い出してください。文明の骨格は、この一つの材料から、作り始められるのだと。