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もしあなたが異世界に転生して、ある年、村を飢饉が襲ったとしたら。畑の主食は実らず、蓄えは底をつき、人々は飢えに苦しみます。剣も魔法もお金も、腹の足しにはなりません。そんなとき、村を飢えから救う切り札になるのが救荒作物、なかでもその王様、サツマイモです。今回は、飢饉に強い作物の話を解説していきます。
飢饉はなぜ起きる

そもそも、なぜ飢饉は起きるのでしょう。冷夏や長雨、日照り、そして虫の大発生。こうした天災がひとたび来ると、麦や米といったその土地の主食が、いっせいに不作になります。村の食べものをたった一種類の作物にたよっていると、それがやられた年に、みんなが飢えてしまう。だからこそ、もしもの備えがいるのです。
ポイント
- 冷夏・長雨・日照り・虫害で不作
- 主食一種にたよると全滅する
- だからもしもの備えがいる
救荒作物とは

そこで頼りになるのが、救荒作物(きゅうこうさくもつ)、飢饉を救う作物です。ふだんの主食が凶作でだめになっても、代わりに人々の腹を満たし、飢えをしのがせてくれる、いわば非常食の畑。ただおいしいだけでは務まりません。天候が悪くても、やせた土地でも、確実に実る、そのしぶとさこそが、いちばんに求められるのです。
ポイント
- 主食が凶作でも腹を満たす作物
- おいしさより確実に実る力
- しぶとさがいちばん大事
救荒作物の五つの条件
では、良い救荒作物とはどんな作物でしょうか。条件はおもに五つ。やせ地や悪天候に強いこと。短い期間で収穫できること。同じ面積から多くのカロリーがとれること。作り方がかんたんなこと。そして、種に頼らず手軽に増やせること。この五つを高い水準でそろって満たすのが、じつはサツマイモなのです。
ポイント
- やせ地・悪天候に強い
- 短期間で穫れて栽培が簡単
- 面積あたりのカロリーが高い
強さ①やせ地と天候

サツマイモのすごさを見ていきましょう。まず、やせた土地にめっぽう強い。ふつうの作物が育たない、砂まじりの荒れ地でもしっかり実をつけます。日照りにも比較的たえられる。さらに、背が低く地面をはうように育つので、嵐が来て葉やツルがやられても、土の中の芋は無事なことが多い。まさに、しぶとさのかたまりです。
ポイント
- 砂地や荒れ地でも実をつける
- 日照りにも比較的たえられる
- 嵐で葉がやられても芋は残る
強さ②養う力の大きさ
つぎに、養う力の大きさです。サツマイモは、同じ広さの畑から、麦などの穀物にくらべてずっと多くのカロリーを生み出せます。その差は、目安で二倍から三倍にもなるといわれます。せまい畑しかない村でも、芋ならより多くの人の腹を満たせる。限られた土地で命をつなぐには、この力が大きくものを言うのです。
ポイント
- 同じ面積で穀物より多いカロリー
- 目安で麦の二〜三倍とも
- せまい畑で多くの人を養える
強さ③増やしやすさ

三つめの強みが、増やしやすさです。サツマイモは、種をまく必要がほとんどありません。芋から出た芽や、伸びたツルを短く切って土に挿すだけで、そこから根づき、新しい株になります。たった一株が、切って挿してをくり返すうちに、いつのまにか畑いっぱいに広がっていく。苗を買うお金もいらないのです。
ポイント
- 種をまかずに増やせる
- ツルを切って土に挿すだけ
- 一株から畑いっぱいに広がる
転生先での使いどころ

ここからは異世界での実践編です。まず植えておきたいのは、飢饉におびえる貧しい村や、開墾したてのやせた新田。戦で畑が荒らされた土地にも向いています。ふだんの主食はこれまでどおり作りつつ、畑の一角にサツマイモを保険として植えておく。凶作の年に、これが村の命綱になってくれるのです。
ポイント
- 飢饉に弱い村や新田に向く
- 主食は続け芋を保険に植える
- 凶作の年の命綱になる
導入の条件と工夫
育てるうえで気をつけたいこともあります。サツマイモは暖かい気候を好み、寒さと霜にとても弱い。だから、植えるのは霜のなくなった暖かい時期に。水はけのよい土にツルを挿して育て、秋に霜が来る前に掘りあげます。葉やツルも食べられ、掘った芋は寒すぎない場所で保存するのが、長もちさせるこつです。
ポイント
- 寒さと霜に弱く暖かい時期に植える
- 水はけよい土にツルを挿す
- 秋に掘り寒すぎない所で保存
見込める効果と史実
効果はどれほどでしょう。やせた土地でも主食なみのカロリーを確保でき、主食が全滅した年でも芋だけは残る、ということがしばしば起こります。じっさい、ある国では青木昆陽(あおきこんよう)という学者がこの芋を広めたおかげで、のちの飢饉で多くの命が救われました。ただし、寒い土地には向かないことは忘れないでください。
ポイント
- 主食が凶作でも芋は残りやすい
- 広めた学者が多くの命を救う
- 寒い土地には向かない点に注意
次の一手

さらに備えを厚くするなら、次の一手です。飢饉への守りは、サツマイモ一種類にたよりきらないのが賢いやり方。そばやヒエ、アワ、カブなど、性質のちがう救荒作物をいくつも組み合わせておけば、どんな天災が来ても、どれかが生き残ります。とれた芋を干し芋にして長く蓄えたり、輪作に組みこんだりすれば、村の備えはより確かになるのです。
ポイント
- 芋一種に頼らず組み合わせる
- そば・ヒエ・アワ・カブなど
- 干し芋で蓄え輪作にも組む
まとめ

やせ地に強く、養う力が大きく、ツル一本から増やせる。サツマイモは、飢饉といういちばんの恐怖から人々を守ってきた命の作物です。もしあなたが異世界に転生したら、豊かな年のうちに、そっとこの芋を畑の隅に植えておいてください。その小さな備えが、いつか村を飢えから救う日がくるかもしれません。